2017年7月

紫陽花の美しい季節です。

雨上がりの後の紫陽花の美しさは格段の光を放っています。

しっとりと佇み、太陽の光を浴びて様々な色合いを映し出す紫陽花は、私の人生をいつも見つめ返してくれる大切なお花です。

25年も前に韓国に嫁いだ友人が、『久美ちゃん、私の母はね、額アジサイが大好きだったんだよ。母は亡くなってしまったけど、妹と額アジサイが咲く季節は、母を思い出し二人で頑張っていこうねと、いつもこの季節に励まし合うの。』こんな風に紫陽花の想い出を語ってくれたことがありました。

『チーちゃん』と呼んでいたこの友人が、嫁ぐ前に『私ね、もうじき嫁ぐから、紫陽花の浴衣を久美ちゃんのお友達にプレゼントしていい? 私は韓国で使わないから。』と。なぜ想い出の絵柄の浴衣を手放すのか不思議になりたずねました。

すると、『久美ちゃんと出逢って素敵な友人を沢山紹介してもらったんだよ。だから久美ちゃんの大切なお友達が浴衣を持っていないと耳にしたから、プレゼントしたいと思ったの。』こんな風に語ってくれました。

チーちゃんは私より5才年下で、私達は何でも話せる姉妹のようでした。

私を姉のように慕ってくれ、私は可愛い妹のように感じていました。

出逢ったばかりの頃は、言葉少なくシャイでテンパるヤキモチやさんでした。

そのチーちゃんと韓国で逢ったときは、驚くほど大人になっていました。

日韓併合の中で、歴史的に作ってしまった韓日感情。

その人間関係の中で生き抜いていました。

『久美ちゃん、年のいった韓国のこちらの人は、まだまだ日本に恨みがあるよ。

私が少しでも架け橋になれればと思っているの。この韓国とのご縁が私のこれからの人生にどんな導きがあるか……心配しないで!いつも久美ちゃんに頼っていたけど、私はしっかり韓国で生きるからね』そう語ってくれました。

あれから何年もの月日が流れました。

チーちゃんは元気なのかと、いつもこの紫陽花の季節に思い出されます。

沢山の辛い事や痛みがあると思います。

何年か前にいただいた手紙で彼女を偲びます。

『元気です。心配しないでね。大丈夫。』

そのわずかな文字に愛情を感じさせてもらいました。

今、私は心からチーちゃんに感謝しています。

日本を離れる時に、もちろん私にも素敵なプレゼントをくれたチーちゃんですが、私の大切な友人にもプレゼントを置いていった彼女のその真心に触れました。

人と人を繋ぐ事をさり気なく行動に現してくれたチーちゃん。

別れの時の私への手紙にこう書かれていました。

『久美ちゃんから得た愛を繋いでいきますね。本当に本当に久美ちゃんに出会った事が生涯の宝です。お姉さんのようでした。でもね、・・・私のお母さんでした』

私は手紙をみて泣きました。

紫陽花は、大地の母を潤す雨にうたれ、更に美しく咲きます。

生きる事は現実沢山の痛みがあります。

でも、美しい虹のように咲く紫陽花。

全ての痛みは栄養となり美しい花を咲かせるのでしょう。

そんな想いを感じさせてくれた、紫陽花の季節。

また、さりげない人との出逢いが豊かな気持ちに導いてくださいます。

(ちーちゃん、ありがとう。)

    皆様も彩り豊かな7月になりますように。